一条天皇という役をいただけて、半生を演じ切れたのはすごくうれしかった

撮影/コザイリサ

――現在、大河ドラマ『光る君へ』で一条天皇役を演じられていて、長い期間をかけて一人の人の半生を表現されていますが、今回のように、ある人物のほんの一場面を切り取るようなときとでは、役との向き合い方に違いは出ますか。

そうですね。やっぱり違いますね。今回のようにある人の一瞬を切り取るようなときは、自分でその人物の背景を考えて挑むことが多く、そうすると、ある程度の自由がありますし、面白い組み立て方もできるし、楽しいんです。

だけど、視聴者目線では、共感したり、気持ちが持っていかれるのは、主に物語を背負っているキャラクーですよね。

だから、そういうふうに(視聴者や観客に)寄り添ってもらえるような人物を演じたいと思っていたところに、今回の一条天皇という役をいただけて、半生を演じ切れたのはすごくうれしかったです。

一人の人物を長く演じられると、現場に入って、その場で感じた空気感や、その場で起こったことに対しても役を組み立てられるというか。僕が脚本を読んで思っていたのとは違う反応や状況になったとしても、それに合わせて役として受け取ることができるんです。

逆に今回の護のようなそれほど登場シーンの多くない役の場合は、自分から発信することをしていかないと、そのキャラクターの背景までは見せることができないので、そこは大きな違いかなと思います。どちらがいいとかではなくて、捉え方の違いですね。

撮影/コザイリサ

――一つの役を長く演じていると、その間に別作品の役が入ってくることもありますよね。他の役も演じながら、一つの役をキープし続けるというのはどうなのでしょうか。

大河を撮っている間にも、他の役を演じていたんですが、どちらかと言うと、一条天皇とは逆というか、それぞれに癖のある役だったので、切り替えやすかった気がします。似ているほうが難しかったんじゃないかな。なので、気持ちよりも体力的にとか、時間的にのほうが大変でした(苦笑)。

――本作の公開が10月11日で、他にも10月25日から映画『八犬伝』、10月期放送のドラマが『ゴールデンカムイ』(WOWOW)、『無能の鷹』(テレビ朝日)、『天狗の台所 Season2』(BS-TBS)と出演作が目白押しです。本当にご活躍の一年だったと思うのですが、ご自身ではどう感じていますか。

今まで培ってきたものというか、その中には苦しかったと感じるようなこともありましたけど、そういう経験をしておいて良かったと思える環境が巡ってきたのかなと感じています。

生意気なことを言いますけど(笑)、僕は場さえ与えてもらえたら、自分が培ってきたものを表現できるって思っていたんです。だから、そういう場に携わらせていただいたことは大きかったです。これからもそういう場所を作っていけたらなと思います。

あとは、すごく人に恵まれた一年だったと思います。そういう方とまたご一緒できるように、僕は自分にできることをやり続けていくしかないという想いです。

撮影/コザイリサ

――どんなときに、これまでの苦労が報われたと感じますか。

先ほども言いましたが、物語に置いて責任あるポジションを務めることで、物語を通して、その人物の人となりであったり、考え方にフォーカスして(視聴者や観客に)観てもらえる。そうすると、その時に出たふとした表情とかからも、役の気持ちが伝わるので、そういうシーンに巡り合えたり、観てもらえる機会があったときですかね。

やっぱり自分の中では、物語には描かれていないその役の背景を考えて演じていたとしても、視聴者の方には伝わりづらい部分はたくさんあって。それが、観ていて自然と伝わるというのは大きいことだなと感じました。

普段から僕のことを応援してくださっている方は、どんな役でも細かい部分まで観てくださっていて、ありがたいなと思っているんですけど、そうではない方々にも、(一条天皇役は)細かいお芝居まで観ていただける機会になったと思います。これからもそういう役に巡り合えるよう頑張っていきたいです。

©2024「チャチャ」製作委員会


劇中で、護のエピソードの中に出て来る黄色い花をイメージして、今回は黄色いバラを持って写真撮影をしていただきました。途中、「バラを劇中に出て来る彼女だと思ってお願いします!」とムチャぶりをしたのですが、嫌な顔一つせず、素敵な表情をたくさん見せてくださいました。

護は塩野さんも言うように、少し不思議な感覚を持ったキャラクターですが、塩野さんが演じたからこそ説得力が出たと感じました。ぜひ、皆さんも劇場でジェットコースターのように目まぐるしく展開が変わる物語を楽しみながら、塩野さんが表現した護にも注目してみてください。

作品紹介

映画『チャチャ』
2024年10月11日(金)より全国公開