「旅育メソッド」してみませんか?「旅育」は子どもの「生きる力」を育みます

村田和子さん(以下、村田):旅行ジャーナリストの村田和子と申します。私は「旅で人・地域・社会を元気にする」をモットーに活動しておりまして、子どもが赤ちゃんの時から旅をし、実体験から情報発信をしています。

うちの息子はすでに高校生ですが、あらためて過去の旅が、子どもの「生きる力」につながっていると感じております。

今日は自身の活動と、自分の家族旅行を振り返りながら、家族旅行の魅力をお話してゆきたいと思います。

「親子の旅育メソッド」ができたワケ

村田:私が息子と家族旅行に出たのは、生後4カ月の時。1泊2日の温泉旅行でした。この時は、ママが主役。自分自身、育児疲れをすごく感じていて、それを解消するための旅でした。

とはいえ当時2001年というのは、赤ちゃんだけでなく幼児連れの旅も認知されていませんし、環境も、サービスも、情報も、SNSもスマホもない時代なので、大変な思いをして計画して、準備をして旅立ったのをいまでもよく覚えています。

ただ、行ってみると、家事や仕事から解放され、1泊2日ですごく、時間と気持ちの余裕ができて、子どもとしっかり向き合えたんです。

しかも帰ってからも、笑顔で子育てができた。そういう成功体験を積むことができたんですね。

当時ちょうど「産後うつ」が社会問題にもなっていて、私のように旅へ出て元気になれるママもいるんじゃないか、と。

でもこの状況ではなかなか旅に出にくいということで、旅行ジャーナリストとして、ママの旅行の必要性や環境整備を業界にお伝えしたり、実体験を通して、ママには赤ちゃんと旅をするノウハウを伝えてまいりました。

それがどう「旅育」につながるかというと・・・。最初は自分自身の旅だったんですけれども、子どもが1歳を過ぎてくると、いろんなものに興味を示して、表情が豊かになってくるんですね。

やはり親としては子どもの笑顔が見たいんで、試行錯誤しているうちに「旅って本当に、子どもの学びにいいなぁ」と実感しまして。自然な流れで「旅育」を意識するようになりました。

もちろん子どもの成長とともに、必要なことは変わってくるので、都度、母親として、旅行の専門家として「旅を通じて子どもを成長させるってどういうことかな」「どんな心がけや声がけをしたら学びのモチベーションが上がるかな」と考えながら旅してきまして、2013年(子どもが小学校6年生の時)に「親子の旅育メソッド」を発表しました。

ことし(2018年)念願の書籍も出して、そちらで詳細もご紹介しています。

どうしていま「旅育」なのか?

村田:いまの時代、共働きが増加し、核家族化が進み、地域との交流が減少しています。子どもの世界って「グローバル化」がこれだけ言われているのに、すごく狭い世界なんですね。

周りにいる大人って、パパ、ママ、学校、保育園・幼稚園の先生、あとお友だちのお父さん・お母さんくらい。かなり偏った価値観の中で子どもが生活しているということを親は認識する必要があると思います。

私も子育てをして気付いたんですけれども、実は子どもって、自分の日常がずっと続いていて、社会のすべてだと思いがちなんですね。そうすると小さいつまづきが大事(おおごと)になったり、なかなか乗り越えられなかったりもする。

意識して外の世界に触れる、旅に出る、世界は広い、いろんな価値観があって、いろんな人がいていいんだよっていうことを理解させる意味でも「出かける」というのは重要なのではないでしょうか。

ほかにもいま「情報化」とか「変化の時代」ということで、どう子育てするかって難しいと思うんですけれども。旅に出ると「百聞は一見に如かず」を実感したり、あとアクシデントも旅のつきものなので、そこで変化に対応して乗り越えるタフさなんかも身につきますね。

「旅育」には時間とお金が必要?家族旅行で大事なことは?

村田:「旅育」の話をすると必ず「時間とお金がかかる、難しいよね」と言われるんですけれども、私自身は、家族旅行というのは「どこへ行くか」よりも「何をするか」がすごく大事だと思っています。

特に未就学のお子さんの場合は近場、電車で2~3駅でも非日常の世界。ぜひ身近なところから「旅育」を始めていただければと思います。

環境整備も急ピッチ!ベビー休憩室やオムツ替え設備、アレルギー対応も拡大中

村田:「近場よりもうちょっと遠くまで旅をしたいな」という方には、いまほんと私がうらやましいと思うくらいに「赤ちゃん旅」を応援する設備が整っていまして。サービスエリアにも、こんなかわいいベビー休憩室があったりするんです。

村田:授乳と一緒に問題になるオムツ替えですが、いま首都圏のSAでは女性トイレのすべて、それから男性トイレの8割にオムツ替えの台があるそうです。

赤ちゃん向けの客室というのも増えてきていますし、無料の離乳食や、短時間の託児があるところも増えています。

もうちょっと踏み込んだところだと、お子様連れ専用の新幹線だとか、ハワイ行きのお子様連れ専用ジェットとか。

アレルギーのあるお子さんも多いと思うんですが、そういった対応旅行というのも増えていて、行く気になれば行ける環境は整ってきています。

「赤ちゃん連れ旅」はもう珍しくない!経験者増が「旅育」ブームに

村田:「赤ちゃん連れ旅」って実際に増加もしていて、ドコモ・ヘルスケア株式会社の調査によれば、回答者の半分以上が経験していたとか。さらに経験者の6割が生後7カ月までに旅に出ているということで、これは計算すると4人にひとりが生後7カ月までに旅に出ているんですね。

そうすると私と同じように、自分のために旅に出たんだけれども、自然と「旅育」につながってくる、それがいまの「旅育」ブームになっているんじゃないかなぁと。

まとめになりますけれども、家族旅行というのは単なるレジャーではなくて「親子の絆を深め、子どもの力を育み、親御さんの心身のメンテナンスをする場」だと思っています。

最後に親御さんにアドバイスなんですけれども、振り返った時に、子どもの成長ってものすごい早いんですね。

これから、お子さんを見ている時に「こんなことを体験させたい!」「こんなことを一緒にしたい!」ということがあると思うんですけれども、時間がたつと全然、興味関心も変わってしまうので。ぜひ「思った時が行き時」ですので、タイミングを逃さず、旅に出てほしいと思います。

――「赤ちゃん連れ旅」を取り巻く社会の現状と「旅育」の利点が一通り語られたところで。

「親のエゴでOK」なんて言っても「子ども」とりわけ「赤ちゃん」にとってはどうなの?ママが乳幼児を連れて旅をする行為は、そうはいっても許されざる「ワガママ」なんじゃないの?

そんな疑問で会場がザワザワし始めたのに応えるように、乳幼児教育と保護者支援を進める玉川大学教授の大豆生田啓友先生と、母乳育児支援で知られる産婦人科医の村上麻里先生が登壇され、専門家による講演が始まりました。

「子育て」するのに大事なことって何だろう? そこから考えてみよう

大豆生田啓友先生(以下、大豆生田):大豆生田っていいます。3人の子どもの親でもありますけれども、玉川大学というところで、幼稚園教諭や保育士になる人たちの養成をしております。

「正しさ幻想」に追い詰められる頑張り屋のママたち、でも本当に大事なのは?

大豆生田:いま、苦しい!辛い!と感じているママが多いですよね。そしてそのしんどさが、あまりにも理解されていない。

ママたちがなぜこんなに苦しいのかを考えてみると、いろんな理由や背景があります。

  • ママがこんなに、ひとりで頑張らなきゃいけないこと
  • 外に出ると、こんなに周りからの目を気にしなきゃいけないこと
  • 情報があふれ回っていること

なんか、多くのママたちが、いまはネットがいっぱい情報をくれるから、子育てってうまくいくように思う、けど、逆なんですよね。

「正しい子育て」とか「子育てのNGワード!」とか。ほかにも「3歳までにこんな風にやらないと子どもは育たない」とか・・・そんなの、研究者的にはあり得ませんよ。

でも「あり得ないこと」が、すごくママたちの中にあふれ返っている。