大豆生田:そうしたら今回『AERA』(2018年10月29日号)が特集を組んでくれました。

子育ての「正しさ幻想」ってことを、私はずっと言っています。

「正しく子育てしなきゃいけない」・・・子どもを褒めて褒めて褒めて、いっつも向き合って育てましょう、とか、無理ですから(笑)

私の問題意識は、まずそこにあるということです。

フィンランドの研究で、実は乳幼児期に、親がどういう風に子どもに接することが大事かっていったら「機嫌よくいればそれでいい」。これが子どもにプラスの影響を与えるということが、分かってきています。

フィンランドがなぜ、子育て支援について「産前産後」から力を入れているかといえば、これはそういう研究のデータに基づいています。

意外と子育てって「親が機嫌よい」ってことが、ものすごい大事だったりするんですね。

注目の「非認知能力」!子どもの心や社会性などを育てるには?

大豆生田:また親をやっていると、早くからいろんな能力を育てなきゃいけないと思いがち、焦りがちだけど、むしろ大事なことはそこではないってことが、最近は世界的な研究で分かってきています。

心や社会性など、昔から大切とされてきたことが、実は生涯にわたる影響をもたらすんですね。

IQなどで測れる「認知能力」に対して「非認知能力」ともいわれて最近、大変注目されているチカラですけれども。

例えば「意欲」。いろんなことについて「おもしろーいっ!」って思ったりすること。

例えば「自尊心」。「ま、自分のやり方でいっかも!」と思えること。

いろんなことに「ワクワクする」だけじゃなくて、それを「夢中になってやり遂げること」や、それから「人と関わる経験」などなど。

そう考えると、いまの子育てって、どちらかっていうと「密室育児」になりがちですから、むしろ「外へ連れ出す」っていうことは、とても大事なことかなっという風に思っています。

「旅育」が成長にもたらす影響とは?注意点にも気を配って!

大豆生田:最後に、では「旅育」ってことをどう考えたらいいかということをお話します。

大豆生田:このように考えてみると、我が家もそうでしたけれども、家族で外に出るってすごく大事です。いまでも、小さな頃から子どもたちとあちこち行ったことは、家族の重要な記憶として残っています。

3歳までの記憶は、どうせ残らない。でも「残らない」っていうのは「思い返せない」という意味で、正確には「残らないという意味ではない」。楽しかった記憶というのは、もしかすると後々まで、いい影響をもたらすかもしれない。

そう考えると、外に出向いていくってことは、とてもいいことだなぁと思います。

っていうか「旅育しましょう」って言うとまた「ねばならぬ」になってくるので、まぁ好きにやったらいいワケですよ(笑)

そういう意味でいえば、さっき「親のエゴ」ってありましたけど、親が「自分たちが楽しんじゃおう」って、大事なことだと思います。

でも私、子どもの専門家でもありますから、そっちからも少し発言をすると、特に、いま「赤ちゃん研究」、すごく進んでいます。「赤ちゃんが赤ちゃんでない」ということが分かっています。意味が分からないかもしれませんけど(笑)

つまり、あの人たちは、かなりいろいろなことが分かっている、ということです。だから逆をいうと、一人前扱いすることがすごく大事ということもいわれています。

大豆生田:ただし、ひとつ言わなきゃいけないのは、赤ちゃんは情報をたくさん取り入れます。だから、たくさんの情報を、一気にたくさん与えることはまずい。フラッシュカードのようなものがなぜまずいかっていえば、それは、たくさんの情報を一気に与えられれば、赤ちゃんがすごく混乱するから、です。

だから旅行なんかも、たくさんの情報が一気に入ってくるので、当然、親にとっての大事さだけではなくて、子ども目線も大事になってきます。

ただ、いまの社会はそのことにデリケートになり過ぎ、ともいえるかもしれません。昔の子育ては、もっと子どもを「放し飼い」にできました。子どもをその辺にほったらかしておいてよかったわけです。

いまはやっぱり、みんながすごく心配にならざるを得ない社会になっている。みんながピリピリして・・・でもそこまでピリピリしなくても、子どもはもっとたくましく生きているんですよ、ということも併せてお伝えしておきたいですね。

家族の小さい頃、別に海外でなくてもいいんです、もう、近場でだっていい。どこかに出向いていくってことは、子どもにとっても、家族にとっても、素敵なことです。

うちの子たちももう大きいですけれども、後々まで、いつまでもいい記憶になっていると思っていますし、いいものをもたらしてくれているに違いありません。

おっぱいマニア産婦人科医が語る「産後うつ」そして「人類と旅」

村上麻里先生(以下、村上):皆様、こんにちは。産婦人科医の村上麻里と申します。

私は3人の子への母乳育児体験と、【母乳110番】顧問等もしている関係でママたちの悩みを聞くことが多いものですから、そういう経験から、母乳育児支援というのが仕事の主なパートになっております。

今回は産婦人科医として、ちょっと違った角度から、産後のお母さんの精神的な面、あと後半は、旅することをもう一度見直してみようというお話をしようと思っています。