作り込まれたステージで表現する、和田彩花がいま思っている全てのこと

座っていた椅子を下げ、しばし暗転。「121位」、「オリーブをくわえた鳩が飛ぶ日には」、「マリッジブルー」、そして未発表曲「無題」とつづく。

真っ赤なスクリーンを舞台にヘヴィなサウンドが流れ、瞬間的な強さを放ちながら和田が踊る。

そこから青いスクリーンへと変わり、ギターのオータケが鉄琴を、ベースの劔がコントラバスを、間奏でキーボードの楢原がバイオリンを奏でる転換は見事だった。

リズミカルなナンバーに、自然と身体が揺れる。映像が流れ、「これからどう生きていきたいですか?」という質問を、ライブに関わるスタッフ全員に和田が投げかける。

家族のこと、仕事のこと、毎日のこと。様々な答えに対して明るく聞き回ることができる和田の問いかけに、観客も同じ問いを自らに投げかけていたように思う。

白い一輪花を握り「for me and you」、「あれは運命的な出来事」、これまで和田が出演したイベントで多く披露されてきた「この気持ちの行く先に」とつづき、少しずつ表情が緩んでいく。

曲中のポエトリーリーディングがスクリーンに映し出され、暗闇の中で踊る。

<同じ人間として生きていきたい>と発露されると、オレンジ色の照明が射した。「あなたが選んだものあなたが選ぶもの」でライブはクライマックスへ。

道端でさえずる鳥や夕焼け、歩く姿など和田が見つめている景色が映し出された映像とともに、演奏は盛り上がりをみせる。観客も声援の代わりに大きな拍手を贈った。

時期を考慮してであろう、ここまでMCなしのノンストップで披露された。

和田は「みなさん、短い時間でしたがありがとうございました」と簡潔に挨拶し、メンバー紹介を行った。ピアノのイントロからはじまり、熱を込めて歌われた「#15」。

そして、オープニング曲のインストに歌詞を乗せた「エピローグ」。暗い会場に光が射すと、一輪花のアーチが観客の頭上近くまで降りてきた。青い照明から暗転し、和田とバンドメンバーはステージを後にした。

照明、映像含め、丁寧に作り込まれたステージは、全曲作詞を担っていることからも、彼女がいま思っていることが詰め込まれていた。

「自分の目で、自分の足で、様々な世界を知りたいです」と語った、和田が見つめて考えてきた様々な事柄をアウトプットし、表現へとつなげていく。

困難であったと思うが、彼女はやさしく寄り添うようにパフォーマンスし、バンドメンバーやスタッフとともに現在の彼女の集大成を堂々と披露した。

その凛としたたたずまいも、ロングヘアを揺らしくるくると踊るお茶目な姿も、ステージに映し出される彼女の影さえもすべて美しかった。

稀な状況だったからこそ、皆がじっくりと彼女が生み出すものに向き合い、自分だけの思い出を抱きしめることのできた一夜になっていたように思う。

和田彩花ライブ『2020 延期の延期の延期』

uP!!!にて事後配信中!
視聴チケット(当日):8月5日(水)9:00まで販売
事後配信:8月5日(水)12:00まで

セットリスト

OP SE
1.Une idole
2.少しの寂しさとともに
ポエトリーリーディング
3.空を遮る首都高速
4.ホットラテ
5.それでも愛を信じるのは
6.スターチス
7.121位
8.オリーブをくわえた鳩が飛ぶ日には
9.マリッジブルー
10.無題
11.For me and you
12.あれは運命的な出来事
13.この気持ちの行く先に
14.あなたが選んだものあなたが選ぶもの
15.#15
16.エピローグ