自分だけでは出せない演技を周りの人に引き出してもらった

――この番組は犯人探しの側面もありますが、次世代の俳優を発掘するのがメインテーマです。みなさんは自分の中にある、俳優としての経験やスキルをすべて出し切ることができましたか?

ちなつ 私は美鈴のそのときの気持ちで彼女の言葉を発したり、動かないといけないと思ったので、美鈴に完全になりきるようにしたんですけど、美鈴に100パーセント振り過ぎてしまって。もう少し客観的なスタンスでやれば、もっと映像の見え方や、マーダーミステリーの面白さが考えられたんじゃないかなという風に後から思いました。

でも、これまでの自分のレベル以上のことを頑張ってやったという自負があるので、後悔はないです。学ぶこともたくさんありましたからね。

はなむら 私は自分の言葉の引き出しの少なさを痛感しました。エンディングの撮影のときに特にそれを感じたんですけど、感情は出ているのに、言葉がすごく少なくて。それに比べて、ベテランの役者さんたちは人生経験も芝居の経験も豊富で、こうすればこう映るといったテクニックも分かっているから、自分で考えられた素晴らしいセリフを絶妙なタイミングで言われるんです。

だから撮影が終わった瞬間、すごく悔しくて。「悔しかったです~」ってみんなの前でも言ったんですけど、自分に足りないところが分かったし、すごく勉強になりました。機会があれば、次はそこを克服して挑みたいですね。

浅川 この7人の中で私だけが芸人だったんですけど、自分の出したものを、周りの人たちに掛け算していただいて、絶対に私ひとりでは出せない演技にまで引き上げてもらいました。それこそ、カメラマンさんの「こっちに顔をよこせ!」の圧はスゴかったし(笑)、大道具さんや劇中の料理を作ってくださった方などスタッフさん全員に助けてもらったので、本当に感謝しています。

――番組では、そんなみなさんの演技を3人の審査員がジャッジしてMSS
(Most Shining Star)を決定します。

審査員は俳優の生瀬勝久さん、『劇場版 おっさんずラブ~LOVE or DEAD~』などの瑠東東一郎監督、米倉涼子主演の『ドクターX』など数々のヒットドラマを手がけたテレビ朝日の内山聖子プロデューサーですが、MSSを勝ち取る自信はありますか? いまの心境をお聞かせください。

はなむら 私は自信ないです。本当にくらいついていって、周りの人たちに引っ張っていただいた感じなので。でも、さっきも言ったように、いい勉強になったし、楽しかったので、個人的にはそれがすごく大きかったです。

ちなつ 記憶がなくなるぐらい全力投球で演じた美鈴がどんな風に映っているのか? どういう風に観た人に伝わるのか? 初めてのことなので、全然予想できないです(笑)。

でも、観てもらえる場をいただけたのは本当にありがたいので、みなさんの言葉を真摯に受けとめたいと思っています…って話していたら、また緊張してきて、いまはちょっと情緒不安定な人です(笑)。

浅川 私は自信しかないですね!(笑)でも、芸人としてもまだ全然若手だし、ファイナリストになった経験もこの番組と『猫王』(猫にまつわるネタ限定お笑い賞レース)だけ。マネージャーさんの株を上げるには、ここでMSSを獲るしかないなと思っています(笑)。

――最後に、みなさんが女優や芸人を目指そうと思ったきっかけとこれからの夢を教えてください。

ちなつ 私はもともとSNSもやらないような引っ込み思案だったんです。そんな私が華やかな女優の世界を目指そうと思ったのは、おばあちゃんのためですね。おばあちゃんは、朝ドラと大河ドラマが大好きだったんです。それで、作り話みたいですけど、私が女優になってテレビに出たら絶対に喜んでくれるだろうなと思って、高校生のときに自分で探して演技のレッスンやモデルの仕事を始めました。

これまでは実力が伴わなくて映像の仕事にチャレンジできなかったんですけど、これを機会にもっと頑張って、おばあちゃんに誓った想いは絶対に叶えたい。お着物を着て、大河ドラマに出演するという夢まで走っていきたいです(笑)。

浅川 私も中高はずっと演劇部で、プロになるときに演劇や映像の世界ではなく、お笑いを選んだんです。だから「M–1グランプリ」や「キング・オブ・コント」で優勝するのが夢なんですけど、この『マーダー★ミステリー~斑目瑞男の事件簿~』でもMSSを獲って、2冠に輝きたい(笑)。目指すは銀幕(映画デビュー)です。松竹芸能所属なので、松竹映画に出演できたら嬉しいですね。

ドラマを観る方とバラエティを観る方って、いまでもやっぱり分かれていると思うんですけど、私が映画やドラマに出たら、私に興味を持った人がお笑いやバラエティも観てくれるようになると思うんです。そうすれば、私ももっとバラエティに出られるようになる(笑)。楽しいことがとにかく大好きなので、そうなればいちばんいいですね。

はなむら 私は就職もしたんですけど、悔いがない人生を送りたかったので、女優になるという自分の夢をしっかり追いかけるために芸能界に入りました。周りの人に夢とか希望が与えられる影響力のある人は本当に素敵だし、悔いのない人生を送りたいということとは別に、私は世界平和に繋がる活動をしたくて。

例えば、ゴミを道に捨てた人がいたときに、私みたいな無名な人が「ゴミ、拾って」と言っても「ハ?」ってなるじゃないですか? でも、石原さとみさんのような方が同じことを言ったら、ゴミを拾ってくれると思うんですよ。そういう意味でも、影響力のある女優になりたいんです。

番組情報

『マーダー★ミステリー~探偵・班目瑞夫の事件簿~』
3月19日(金)深夜1時34分~ ABCテレビにて放送。
ABEMAで同時配信決定!
番組公式Twitter:@MadarameMisuo

映画ライター。独自の輝きを放つ新進の女優と新しい才能を発見することに至福の喜びを感じている。キネマ旬報、日本映画magazine、T.東京ウォーカーなどで執筆。休みの日は温泉(特に秘湯)や銭湯、安くて美味しいレストラン、酒場を求めて旅に出ることが多い。店主やシェフと話すのも最近は楽しみ。