アイルランド人は旅行好き
そんな彼らがお酒の次にたくさんのエネルギーをつぎ込んでいるのが「旅」である。
アイルランドはその名のとおり島国だ。EU加盟国なので通貨はユーロだが、すぐお隣の島イギリスではポンドが使われている。
別々の国という線引きはあるけれど、ダブリンとロンドンを結ぶ飛行機はほとんど国内線扱い。アイルランド人のなかには、イギリス(特にロンドン)に進学したり、就職したりする人がかなり多い。
アイルランド人は移民に寛容だ。かつて、アメリカ大陸へ多くのアイルランド人が渡り、「アイルランド系アメリカ人」という大きなグループを形成した。
アイルランドの伝統音楽からアメリカのカントリー・ミュージックが生まれ、アイルランド独特のケルティック・ダンスからタップダンスが生まれたとも言われている。
そんなアイルランド人にとって、移民を受け入れることや、異国に移り住むことは大きな障害ではないのかもしれない。
夏以外はあまり晴天に恵まれないダブリンは、1年を通して「島からの脱出」を図る人がとても多い。
同じユーロ圏内のリゾート地や観光地を目指して、年に4回も5回も休暇を取り、旅を楽しむ。ユーロ圏内だと、航空券はまるで電車にでも乗るように安い。
例えば、ダブリンからロンドンへは約2000円、パリへは約4000円というように、オフシーズンや時間帯を選べばかなり安く旅ができる。
「週末ちょっとロンドンへ」「3連休にちょっとパリへ」というミニ旅行が気軽にできるのが地続きの地、ヨーロッパだ。なんともうらやましい。
ダブリン空港で見かけたアイルランド人たちは、小さな荷物だけで、近所に買い物にでも行くように飛行機に乗る。
しかも、たっぷりウイスキーを飲み、すっかり出来上がった状態で。
街なかで昼飲みをし、飛行機に乗る前からゼロ次会で酔っぱらい、リゾート地でまた酒を飲み、休暇を謳歌する彼らを見ていると、自分が無粋な仕事人間に思えてしまう。
3年間たくさん働いて、やっと実現したヨーロッパの旅。そこで、本当の旅の仕方を思い知らされた。
(つづく)