ローマで迷子に

夕暮れどきのコロッセオ。入場には18ユーロ(約2500円)かかるが、外から眺めるだけでも十分迫力がある

ベネチアで街歩きを楽しみ、フィレンツェで芸術を堪能した私と娘はローマへ。メインイベントは世界遺産の円形闘技場コロッセオ見学。

ヨーロッパはとにかくなんでも「事前に予約」が鉄則だ。

飛行機やホテルはもちろんのこと、遺跡見学、美術館や博物館の入場、一部の有名レストランなどは、ネット予約をして手元にQRコードを用意し、スマホで入場する。

予約せずに行くと入場できないか、または何時間も待たされることになる。

スマホがなければヨーロッパ旅行はかなり難しい。コロナでデジタル化が推進されたこともある。

コロッセオに行く日、私は片付けなければいけない仕事があり、野暮だと思いながらも宿泊したアパートメントでPCに向かって仕事をした。娘は1人でバチカン市国を訪れ、夕方コロッセオで待ち合わせする。

仕事を終えて余裕をもって部屋を出た私だが、まず地下鉄の駅が見つからない。

ここまですべて娘まかせにしていただけに、地下鉄へたどり着くのもひと苦労。事前に娘からレクチャーされていた地下鉄の切符購入にも大いに戸惑う。

コインを先に入れる、ボタンを押す…そんな単純なことさえ、画面の文字がすべてイタリア語だとあたふたしてしまう。

ようやく改札をくぐり、地下へ下りて行き先を確認しようとしてまた慌てる。

地下ではスマホの電波が届かないのだ。これでは上りと下り、どちらの地下鉄に乗ったらいいのかわからない。

もう一度改札の近くまで戻るが、それでもスマホは圏外のまま。

一度入ってしまった改札から出ることもできず、私はカンにまかせてホームに到着した地下鉄に乗ってみたのだが、間違いに気づいて2つ先の駅で逆方向の地下鉄に乗り換える。

そして3駅ほど乗って「ん? やっぱりさっきのほうが正しかったのか?」もう一度、逆方向の地下鉄に乗り換える。

おなかはペコペコ。迷子になった。心細さで泣きそうになる。

旅行ライターたる者、タクシーを使ったら負けだ。

ここはなんとしても地下鉄で目的地までたどり着きたい。

3回地下鉄を乗り間違えて、ようやく地上に出て、なんとかコロッセオへ。娘はとっくに到着していた。

「ママ遅かったじゃん」

これだから旅はやめられない。ベネチアでは子供の頃の夢の実現に涙し、ローマでは心細さに涙を流す。

旅路は恋路と似ている。一目惚れして、のめり込んで、我を忘れて追いかけても、冷たく突き放されることもある。

失敗というスパイスがその経験を味わい深いものにしてくれる。

(つづく)

ローマの聖マリア大聖堂前でいただくディナー。こちらのストリート・ギタリストは各テーブルを回り、やや強制的にチップを集めていた

ヨーロッパでのインターネット事情

ヨーロッパでのインターネット接続はどうしようかと悩んだが、結局、トランジットで立ち寄ったロンドンの空港でSIMカードを買った。

ここ数年の間に日本のスマートフォンもSIMフリーが一般的となっている。

私もキャリア(携帯電話会社)を変更できるSIMフリーのスマホを使っているので、ロンドンでユーロ圏全域対応のプリペイドSIMを購入して差し替えた。

たとえば30日間有効でギガは無限だと約30ユーロなど、選択肢がいろいろある。短期間ならもっと安く抑えることもでき、今回はアイルランド、イギリス、イタリアで問題なく使えた。

みつせ のりこ:90年代から台湾と関わり、台北で留学や就職、結婚や子育ても経験。現在は執筆や通訳、取材コーディネートの仕事で日本と台湾を往復している。著書に『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾縦断! 人情食堂と美景の旅』『台湾一周!!途中下車、美味しい旅』など。株式会社キーワード所属。