第一印象は「ベンヴォーリオ」
――二人芝居の相手役を知った時は、どう思われましたか?
木村 実際にお会いしたのは今日が初めてですけど、前田さんについて知っていたのは、それこそ『ロミジュリ』で同じ役(ベンヴォーリオ。木村さんは2019年公演に出演)をやっていたことくらいですね。
前田 そう、僕にとってはベンヴォーリオという役がどういうものか、参考に見させていただいていた人で。なので、木村さんというよりベンヴォーリオのイメージが最初は強かったです(笑)。でも木村さんはいろんな作品に出られているので、ご本人はどういう方なんだろうと、とりあえずYouTubeをいろいろサーフィンして調べて(笑)。
木村 おお〜(笑)。
前田 ま、だからどうという話じゃないんですけど。“私”の役と何が通ずるか、それは分からないので。
木村 でも、不安じゃないですか?
前田 いや、まったくそんなことは思わないです。
木村 言葉だけでも嬉しい(笑)。
前田 いやいや、本当に!
木村 僕は、まだ共演したことのない方とやれることが嬉しいし、いい意味で、“彼”役が「ミュージカルの舞台を踏み倒して来た!」みたいな人じゃないといいなと思っていたから、安心したと言いますか。
前田 ああ〜分かる。演出の栗山さんも、芝居をメインに考える方ですよね。これまでの稽古でも「なぜ今、動いたの?」といった指摘をされたりして、気持ちで動くことをビジョンとされていると聞いたので、その軸をブレないようにしないといけないだろうなと。
木村 前田さんは映像のお仕事もたくさんやっていらっしゃるし、型にはめるようなことはない、柔軟な考えの持ち主だなと今、聞いていてすごく安心しましたね。「なぜ今、一歩動いたか」の探究心を持って取り組める人は素晴らしいなと思います。ふたりで『スリル・ミー』に新たな風を吹かせられたら嬉しいな、前田さんでよかったなと思っています。
前田 おお〜。初めてお会いしてまだ30分とは思えないお言葉をいただいて、光栄ですね。(一同笑)
木村 だって、ちょっと会話を交わしただけでも、どういう思いでこの作品に挑もうとしているのか、お互いに分かりますよね?
前田 うん、本当に。前回の上演の時は、栗山さんがそれぞれのペアにキャッチフレーズみたいなものをつけられていたって話も聞いたんですけど、もし栗山さんが我々ふたりの芝居を見てつけてくれるなら、抽象的な言葉で、どんな意味にも受け取れるキャッチフレーズがつくのが一番理想だなって思いました。今、木村さんに“新たな風”って言ってもらえたのは嬉しかったですね。
――今のキャッチフレーズにも通じるかと思いますが、現時点で理想として、ほかの2チームとは違う、おふたりのペアが醸し出す空気、色はどんなものになりそう? これ、すべてのチームに聞いている質問なんですが。
木村 なんか……インタビューから戦わせに来てますね!(一同笑)
前田 僕はさっきの話で言うと、「どういうペア」ってカテゴライズされないペアのほうがいいですね。
木村 あ、僕も。
前田 色が入ったとしても真っ白な状態で。例えば観劇された方が緊張感やスリルを味わって、いろんな色が混ざっていくような感覚に陥るけれど、一番最後には真っ白になって……あれ? このペアって結局、何だったんだろうって後から気になったりして。そういう生の感覚、ライブ感を大事に出来たらいいなと思います。
木村 どういうペアにしたいかは……分からないですね。自分だけじゃなくてふたりとしてどう見られたいかと考えると、それは結局、化学反応でしかないから。個人的には、出来るだけお芝居をしない雰囲気でいけたらいいかな、という気持ちはありますね。
先ほど前田さんが「舞台に上がったら、稽古でやって来たものを出す」とおっしゃっていたように、その日、その場の感覚で、フレキシブルな考えを持って、ふたりでぶつかっていけたらなと思います。