素直な感情を映画の中に残してくださいました

©2025『知らないカノジョ』製作委員会

――三木孝浩監督の演出はどうでしたか。

中島:僕のナチュラルな部分を引き出してくださったなと感じています。三木監督が直接、僕にしてくださったディレクションだけでなく、キャスティングとか、世界観とか、用意してくださったもののトータルの中で、僕は俳優として赤裸々になれたのだと思います。

音楽活動では自分を飾ったり、よく見せたりしないといけないことも多いんです。でも、映画は心を裸にする場所だって、僕は思っていて。

そもそも映画を作る中では、外連味のようなものは不必要だと思うんですけど、三木監督は僕のそういう飾る気持ちとかをすべて取り除いてくれて、心の中にある素直な感情を映画の中に残してくださいました。

――具体的に言うと、どんなことなのでしょうか。

中島:例えば、僕は考え過ぎる性格なので、むしろ何も考えないほうがいいとアドバイスをくださるとか。数日後に大切なシーンの撮影があるけど、気負わずに、その日までにリクの心の理解を深めてもらえばいいからと、優しく声をかけてくださったりとか。

緊張するシーンがあると、僕はその日が近づくにつれて体がこわばってしまう時があるんですけど、今回の現場はそういうことがあまりなくて。逆にカジさんと一緒のシーンとかで、台本には書かれていない、リクとしての感情が急に出てきたりとか。

それは、僕とキリケンさんの関係もそうですけど、それを出せるシチュエーションを監督が用意してくださったからこそ、生まれたものだったと思います。そういう部分を引き出していただけたことは、本当に感謝しています。

これまで三木監督のいろんな作品を観てきて、ずっと出演したいと思っていたし、個人的にも新たなスタートを迎えるタイミングでもあったので、そこで憧れの監督の作品に出られたことは、すごく良かったです。心が充実しました。

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――桐谷さんは三木監督と何度かご一緒していますね。

桐谷:3回目(『ソラニン』2010年公開、『くちびるに歌を』2015年公開)です。久しぶりではあったんですけど、なんとなく三木さんの「ここ欲しいんやろな」みたいな、痒い所に手が伸ばせる感覚は自分の中ではわかっているつもりで。

カジを演じるうえで、僕が一人称で考えている部分と、衣装合わせの時にお話をして、監督の「こうあってほしい」という客観的な部分とをミックスさせながら作っていきました。

三木さんは撮りたいものがはっきりしていらっしゃるので、ほしいものをちゃんと言ってくださるんです。だから、それを現場でやりながら、僕が「こうしたい」という部分があれば、それを伝えて、セッションしながらやっていきました。